宅建業の免許取得に当たっての2大要件である「事務所要件」と「専任の取引士要件」

今回は、事務所要件につついて詳しく見ていくことにしましょう。

本店と支店

宅建士試験で本店と支店が複数あったとしても同一都道府県の場合は都道府県知事免許、複数の都道府県にまたがる場合は、国土交通大臣免許が必要であることは学習しましたね。

パターンとしては、次の図のように3パターンに分かれます。

パターン1 本店のみのケース

宅建業の新規開業時点においては、通常、本店一か所のみで開業することが殆どであり、最もシンプルなパターンと言えましょう。この場合は、本店所在地の都道府県知事宛ての申請を行うことになり、申請窓口は、各都道府県の不動産許認可担当窓口となっています。

なお、本店とは、登記簿上の本店所在地(履歴事項全部証明書の現所在地)でありますので、取りあえず自宅などで形式上だけ登記簿上の本店を置いているケースでは、宅建業を実際に営む本店に、本店登記の移転が必要であることに注意が必要です。

パターン2 本店と支店が同一都道府県に所在するケース

同一都道府県内に本店と支店が混在するケースでは、都道府県知事免許となります。このパターンは意外にも少ないですね。

なお、当然のことながら、本店と各支店において、宅建業に従事する者に相応する専任の取引士の配置義務があることは言うまでもありません。

パターン3 本店と支店が異なった都道府県に所在するケース

所謂、「大臣免許」のパターンです。
この場合においては、申請窓口は本店所在の都道府県の免許担当窓口となり、当該都道府県の窓口を通じて、国(各地の地方整備局)において実際の審査がなされるという複雑な構造となります。都道府県知事による新規免許審査期間が30~40日となるところが、大臣免許の場合90日~100日と相応に時間がかかることにも注意が必要です。
宅建業者が銀行取引など対外的取引を行うに当たって、大臣免許は一般に都道府県知事免許より信用が高く見られることもあり、融資を有利に引き出すことから、他の都道府県に支店を設置して大臣免許を目指す事業者の方も多いです。

本店と支店の取扱いでの注意点

本店は必ず宅建業法における営業所となる

「支店だけで宅建業を営むので本店では宅建業の免許は不要」と勘違いされている方が多くおられます。
宅建業の免許の考え方としては、次の通りです。

支店で宅建業を営むのであれば、本部機能があるはずの本店でも宅建業の免許が必要である。

つまり、宅建業者の本店は必ず、宅建業の営業所となることに注意が必要です。

宅建業を営まない支店は「宅建業法上の支店」でない

以上の通り、宅建業を営業する営業所が本店又は支店と認識されるため、本店以外の支店でも宅建業を営むのであれば、「宅建業免許上の支店」として取り扱われることになります。

これを逆から言えば、宅建業を全く営まない支店は「宅建業免許上の支店」とならず、事務所要件や専任の取引士の設置義務がないということになります。

例えば、飲食店を兼業している事業者が、支店Aで宅建業、支店Bでは飲食業のみを行っているとすれば、当該事業者に宅建免許上にクリアすべき事務所要件が必要となるのは、本店及び支店Aということになりますね。

本店、支店それぞれに事務所要件、専任の取引士設置要件が必要となる

本店は当然ながら、宅建業を営む支店においても宅建免許上必要とされる事務所要件及び専任の取引士の設置義務がそれぞれ営業所単位で必要となることに注意が必要です。
例えば、本店の取引士を近くの支店の専任の取引士に兼務させることはNGとなります。この場合、本店から支店に異動させなければなりません。