働き方改革の流れの中で、一つの会社にしがみついて定年を迎えて退職金ゲット、引退というのは既に若者にとっては妄想に近い状況になりつつありますね。

昨今では、副業を全面的に解禁する大企業も増加しており、今後は一人でいくつもの職業を持つダブルワーク、トリプルワークが当たり前になってくるのでないでしょうか。

今回は、このような流れの中で、副業としての宅建業の可能性を検討していきたいと思います。

宅建業の会社の経営者、つまり代表取締役になって不動産会社を経営したり、宅建業の会社に出資して実質的に会社を経営するということが考えられそうです。

ただ、宅建業で問題となるのは、「専任の取引士」要件です。
これを現在の会社、副業先の会社でどちらも満たしていく必要があるので、簡単ではありません。

宅建士と副業に関する大前提

まずは宅地建物取引士が専任であるか否か、出資、経営、労働のどこまで認められるかをザクっと要約すると次の通りとなります。

専任の取引士はそもそも副業が認められない。
出資は就業と異なるため、宅建業を営む会社への出資は問題ない
非常勤の取締役は例外的に副業先から非常勤証明を発行されれば問題ない。

まず結論を一覧表にすると次のようになります。

以下、現状のステイタスに応じて解説していきましょう。

現在、宅建業者の専任の取引士のケース

専任の取引士とは、当該宅建業者に常勤し専従する必要があるため、一切の副業は認められません。会社が認めたとしても、宅建業法上、副業が禁じられているのです。これは副業先が宅建業者であろうが無かろうが関係なく、一切の副業が認められていません。
では、全く他社に関与できないのかというと、2つだけ例外があります。

・出資者となること
・非常勤の取締役となること。

自らが出資する新設会社で自らが代表取締役となり、専任の取引士を別に配置したとしても、難しいです。
宅建業には政令の使用人という制度がありますが、これは宅建業の代表取締役が事務所に常勤できない場合であり、一見、可能そうに思われますが、結論としてはNGとなります。
これは、代表取締役は非常勤と雖も、宅建業に従事する者に必ずカウントされるためです。従って、他の事業者で宅建業に従事する者となることは、現在の会社の専任性と競合を来し、結果認められないことになります。

会社が副業を認めながら、法で認められないというのは理不尽ですが、仕方ありません。
このように考えると、企業側としては、副業解禁と同時に専任の取引士には特別手当などを支給しなければ不公平となりそうですね。

現在、宅建業者の専任でない取引士のケース

現在、専任の取引士でなく単に宅建士として従事しているケースでは、一気に副業スタイルが広がります。副業先で専任の取引士になれないだけであり、専任の取引士を別途、雇用するなどすれば、宅建業会社の代表取締役に就任することも可能です。

そもそも宅建士でないケース

上記、専任でない取引士と同じで、そもそも宅地建物取引士でないため副業は自由です。
このパターンで副業される方が意外に多く、自ら宅建業の会社を新設して代表に就任し、専任の取引士に別途取締役に入ってもらうか、従業員として雇用するなどにより、副業で自ら宅建業の会社を経営することは可能です。

以上のように見ると、現在勤務する会社で専任の取引士である人は、副業という観点から言えば殆ど身動きが取れないことと言えます。